東本願寺では、毎年七月に約二週間の日程で「安居」という僧侶の学習会が開催されています。享保元年(一七一六)に始まるとされているので、三〇〇年を超える歴史があります。今年は私も参加しました。七月一七日から三一日まで、午前中は、『口伝鈔(くでんしょう)』(本願寺三代覚如(かくにょ)上人著)、『西方指南抄(さいほうしなんしょう)』(親鸞聖人著)などをテキストに、専門的な講義がありました。それを受けて、午後は参加者同士の話し合いです。
もともとの「安居」の始まりは約二五〇〇年前のお釈迦様の時代です。インドでは雨季が四か月ほどあり、この期間は雨が激しく、修行僧は修行の旅(遊行(ゆぎょう))に出ることができません。そこで、お釈迦様は、修行僧を一か所に滞在させ、修行生活を送るように勧めました。
お釈迦様が「安居」を勧められた理由はもう一つあります。雨季は草木が繁り、多くの小動物が活動する時期です。もし、修行僧たちが各地を歩き回ると、植物の芽や若葉、小さな生き物を踏みつぶしてしまいます。生きとし生けるものの命を奪ってはいけないという仏教の教えにそむくことになるからです。
「安居」は修行僧の学習会だと思っていましたが、生きとし生けるものの命を守るというあたたかい教えがあることを知りました。併せて、講義からは、法然上人や親鸞聖人から受け継がれてきた念仏往生のみ教えや浄土真宗の肝要を、歴史学的な視点から学ぶことができました。今、自分中心の考えにどっぷり浸かっている私たちは、仏教から学ぶことをおろそかにしがちです。しかし、仏教には人間の生き方を豊かにする智慧があります。いろいろな機会を通じて、確かめ合いたいと思います。