アメリカ映画界での最高の栄誉であるアカデミー賞で、山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』が視覚効果賞を受賞した。視覚効果賞は、その年の映画の中で視覚効果(VFX)を最も優れた形で活用した作品に与えられる。過去の受賞作には『ロード・オブ・ザ・リング』『タイタニック』などの名作がある。日本映画として初めてあり、歴史的な快挙といえる。
物語は終戦直後の東京を舞台に展開する。特攻の生き残りである敷島浩一は、焼け野原で赤ん坊を抱えた若い女性、大石典子と出会う。二人は共に生活を始め、安定を築いていくが、突如、東京は巨大怪獣ゴジラに襲われる。ゴジラは復興の途上にある街を容赦なく破壊し、その迫力ある表現とVFXによって観客を圧倒する。
人々や日本を守るためにゴジラに立ち向かう一人に、特攻任務から逃れた過去を持つ敷島がいた。弱虫の彼であったが、その姿は特攻時代とは明らかに違っていた。彼も一翼を担い、その奮闘が日本を救った。
ところで、ゴジラの正体は何者なのか。『広辞苑』によると、ビキニ環礁近くに太古より眠る生物で、水爆実験の影響で巨大化したとされる。ならば、ゴジラは人間の悪業が生み出した怪獣なのではないのか。人間への襲撃は、人間への反発や抵抗の表れとも考えられる。
作品にはゴジラの正体について明確な答えはない。ただ、物語の最後のシーンに、破壊されたゴジラの破片が海中で再生していく場面があった。ゴジラはいつか再生し、再び人間に脅威を与える可能性を暗示している。人間の無明煩悩にきりはなく、いつまでも消えることがない。ゴジラはいつか蘇るだろう。そして、再び、人間が抱える無知や欲望への警告を始めるだろう。ゴジラの攻撃が止むことはない。