輪島に住む友人から電話がありました。震災から一か月が経ち、能登の様子を話してくれました。多くの家屋が倒壊し、地盤の隆起で砂浜が沖に広がり、漁港にも大きな被害が出ています。のどかな街の風景は一変し、地震の恐ろしさとすさまじさを実感しているとのことでした。
友人はお寺の住職です。お寺の全壊は免れたものの、境内の地面に亀裂が入ったり、内陣の損壊や仏具等の散乱があったりと、やはり被害は深刻です。お寺には電気は通っておらず、発電機だよりです。また、断水が深刻で、水道が届くまでには半年くらいの時間がかかるそうです。「住職も避難所へ来ては」との声がかかるのですが、「私は阿弥陀さんを守る!」と、お寺での生活をし、暇を見つけては、若住職とともに避難所での炊き出しを行っているとのことです。
彼の大きな心配は自坊の再興でしょう。現状を目の当たりにして、なかなか希望が見いだせないのが現実だと思います。しかし、救いとなるのは、みんながお参りできるようにと、ご門徒の方々が、いち早くお寺の参道を修復し、また、お寺への多くの支援をいただいていることです。さらに若住職は、何十年かかっても再興するとの強い意欲を示してくれているそうです。
お寺の再興を思う友人と話し、「お寺は電気や水道と同じだ」と言っているように感じました。お寺は、人間として生きるための心のライフライン。そこに使命を見出し、一日も早く復興しなければならないというのが、友人の思いなのでしょう。人間が生きるためのよりどころとして、お寺はどのようなライフラインの役割を果たせるのか。このことについて考えていきたいと思います。あわせて、北陸は「真宗王国」と呼ばれ仏心に篤い門徒が多い地域です。お寺が中心となって、街全体の復興へとつながることを心より念じています。